現在、中小企業の経営者の高齢化や後継者不足による事業廃止が深刻な問題として認識されていますが、医療業界も例外ではありません。この問題を解決するため、政府は税務上の優遇措置を講じる、補助金や助成金制度を設けるなど、事業継続を支援する対策を講じており、現時点で事業承継を検討する必要に迫られていないという方にとっても、今後事業をどのように継承していくかを考える絶好のタイミングとも言えます。また、後継者不足に限らず、アーリーリタイアや業績不振による事業廃止をお考えの方にとっても、事業承継が有効な対応策の一つとして考えられます。
事業承継にはこんなメリットがあります!
後継者問題を解消できる
親族に事業を継いでくれる後継者がいない、資金不足等により従業員に承継することが困難といった理由から、廃院をお考えの場合、第三者に承継することで、病院、クリニックを存続させることができます。
事業継続により関係者への影響を最小限に抑えられる
医療機関は一般の事業会社に比べて公益性の高い事業です。廃院による影響は患者さまに限らず、地域のみなさまにも大きな影響を及ぼします。医院継承をすることで、病院、クリニックを存続させることができ、従業員の雇用維持や取引先との取引継続なども可能となります。
創業者利益の獲得
継承することで、事業を現金化し、出資持分を上回る分を創業者利益として獲得することができます。
廃院コストの削減
廃院には建物の解体費用や原状回復費用、医療廃棄物の処分費用、従業員の退職金、借入金の清算など数百万〜1千万円以上のコストがかかると言われています。事業継承により、これらの廃院費用を回避することができます。
医療に集中できる
病院、クリニックの経営と医療行為を両立させるのは容易なことではありません。事業承継により、経営を第三者に任せることで、医療行為に集中できる環境を整備するということも可能となります。
事業承継に関する税制の優遇措置があります!
医療法人
平成30年税制改正により、事業承継税制の特例制度が設けられ、従来の適用条件が緩和され、適用範囲が拡充されることになりました。この特例制度は期間限定のため、期限内に事業承継税制の適用を受けることにより、経営者が保有する会社の株式(医療法人の場合は出資持分)を、後継者に贈与又は相続する際に課せられる税金を一旦猶予し、その後一定期間保有することで免除することが可能となります。詳しくは「医療法人の事業承継と税制」をご参照ください。
個人事業主
個人事業主に対しては平成31年度税制改正で個人事業者の事業承継税制が創設されました。事業承継税制の適用により、事業用資産を後継者に贈与又は相続する際に課せられる税金を、一旦猶予することが可能となります。
医療法人、病院、クリニックの事業承継のポイント
一般事業会社と異なり、医療法人、病院、クリニックといった医療機関の事業承継には気を付けなければならないポイントがあります。
手続きの複雑さ
医療法人は、一般企業と異なり、さまざまな法律が適用されることから、諸手続きが煩雑になりがちです。特に事業承継に関しては、医療法人の類型や管轄官庁により、手順が異なる場合があります。事業承継に慣れているという方は少ないと思いますので、専門家に依頼すると安心です。
患者さまへの影響
一般の事業会社と異なり、従業員や取引先だけではなく、患者さまにも大きな影響を与えます。院長先生が引退される、後継者が外部の方である、といった場合には、患者さまの不安も大きく、ご理解いただくのに時間を要する場合があります。
事業承継は患者さまをはじめ、従業員や取引先など、多くの関係者に影響を及ぼすだけでなく、事業承継により生じる税負担は株式や事業用資産を移転するタイミングに大きく変動する可能性があることから、早い段階で検討を開始することが重要となります。当事務所では、相続税対策をはじめとする事前の対応から、関係者のみなさまが安心して新体制に移行できるよう、事業継承後の新経営体制の構築支援まで、幅広く業務を提供しております。